組織行動学のクラム(Kathy.E.Kram)が提唱するメンタリング理論ですが、これまでのキャリアコンサルタント学科試験では出題はありませんが、頻出資料となっている、いわゆるJIL(ジル)資料に取り上げられていることから試験範囲であるといえます。
本記事では、そんなクラムのメンタリング理論についてポイントをまとめています。
クラムのメンタリング
組織行動学の専門家であるクラムは、キャリア発達を促進する人間関係(人の育成、指導方法)としてメンタリング行動の重要性を指摘しています。
メンターとは、クラムの定義によると、ヤングアダルトや青年たちが大人の世界や仕事の世界を渡っていくための術を学ぶことを支援する『より経験を積んだ年長者』を意味する言葉となっており、ヤングアダルトが重要な任務を遂行するのを支援し、導き、助言を与える存在となります。
メンタリングとは、このような役割を行うことを指し、メンタリングを受ける側をプロテジェと呼びます。
メンターとプロテジェ言うんやな!
メンタリング行動とは?
メンタリング行動には、
- キャリア的機能(career functions)
- 心理・社会的機能(psychosocial functions)
の2つの機能があります。
キャリア的機能
「キャリア的機能」とは仕事のコツや組織の内部事情を教えることで組織内での昇進への備えを促すような行動を指し、上位の者としての経験や組織内における相応のランク、組織的な影響力があって初めて発揮される機能になります。
具体的には、
- スポンサーシップ
- 推薦と可視性
- 訓練/コーチング
- 保護
- 挑戦しがいのある仕事の割り当て
の5つが挙げられられます。
心理・社会的機能
「心理・社会的機能」とは、専門家としてのコンピテンス、アイデンティティの明確さ、有効性を高めるような導きを指し、相互の信頼と親密さを増すような対人関係によって生まれる機能になります。
具体的には、
- 役割モデルの提示
- 受容と確認
- カウンセリング
- 友好
の4つが挙げられられます。
発達的ネットワーク
また、同じ大学のダグラス・T・ホールとの共同研究から、キャリアを取り巻くコンテクスト(文脈)が従来の伝統的なものから変動的(発達的ネットワーク的)なものへと変化したことにより、キャリア発達を促進するメンタリング行動にも変化が生じていることを明らかにしています。
伝統的な⾒⽅ | 発達的ネットワーク的な⾒⽅ | |
メンタリング関係 | 組織的な | イントラや複数の企業・組織をつなげた組織(例 専門的職業、コミュニティ、家族) |
階層的な | 多層的な | |
単一の2者の関係 | 複数の2者の関係/ネットワーク化された関係 | |
プロテジェの学習に焦点をあてる | 相互関係と相互作用 | |
キャリアにおいて、連続した関係で提供 | キャリアにおいて、いつでも、複数の関係により同時に提供される | |
提供する部門 | 組織/業務上の | キャリア/個人的な |
分析レベル | 2者レベル | ネットワークレベルと2者レベル |
ホールがここで出てくるんか!
確かにプロティアン・キャリアと印象が似てるな!
ホールのプロティアン・キャリアについてまとめた記事が下記になりますので、合わせて読んでみてください。
まとめ
クラムのメンタリング理論についてまとめました。
前期理論と後期理論など、発展していく理論は、時代や社会動向にマッチしてくるので興味深く面白い印象です。